私事で恐縮ですが、私の息子は高校から開成高校という進学校に進みました。ここは高い東大進学率を誇る名門校です。ただし、毎年現役で東大に合格する人は大体100人程度、一学年は400人(高校から入学した100人を含む)なので、言い方を変えれば、4人に3人はそこまで勉強が得意ではない、ということです。特に、中学受験に成功して入学してきた人は、入学後の数年間の間にざっくり言うと2つのグループに分かれています。一つは学年をリードするような優秀な成績を取り続ける生徒。もう一つは勉強する道にはぐれて成績が低迷しているグループです。高校からの入学者は高校受験を突破してきているため、大学受験までの間に大きく成績が落ち込むことはあまりありません。高校組は全体としてはだいたい中間程度の成績を占めることが多いようです。東大合格者の割合を見ても、中学入学組と高校入学組ではそれほど大きな落差はありません。高校受験で叩かれてきたグループと、失礼ながら6年間ゆるやかに暮らしてきたグループとの格差がない、ということは、勿論中学入学組の素質の高さを示すものだと思います。
私のような者が気になるのは、中学入学組の中で成績の低迷しているグループです。中学受験では成功しているのですから、素質はそれなり以上にあるはずです。では、なぜ、成績低迷に至るのでしょうか。第一の要因は、入学後の衝撃でしょう。そういう学校に入学する生徒さんの多くは、それまで通っていた学校でも塾でも、成績優秀だったはずです。ところが、進学校に来ると、自分の同じかそれ以上に優秀な生徒がたくさんいる。それまで特別だった自分が、いきなり平凡になるのですから、その衝撃は相当大きいことが推察されます。そしてここに第二の要因の根っこが隠れています。平凡であることに慣れていない生徒さんの中には、自分がなにか特別な存在であることを他に示したくなります。ただ、何しろ優れた人間ばかりが周囲にいるので、何かに秀でることによって目立つのはなかなか難しい。ところが、「勉強しない」という無頼を気取ることは、それに比べればかなり容易いのです。これには思春期特有の、物事を斜に構えてみる、という姿勢も影響している場合があります。勉強などという世俗にまみれたことは自分はしないのだ、それでも動じないような人間なのだと示すことで、周りから一目置かれることになります。そういう自分を心地よく感じると、勉強しないことがその生徒さんのアイデンティティになってしまいます。そして、これが第三の要因、いつまでもその状況から抜け出せない理由になります。中高一貫校で、特に中学校から入学した場合、6年間殆ど同じ人々と暮らすことになりますが、人間というものはある集団の中で一度固定的なイメージができると、それを打破するのはかなり難しくなります。それこそ中間試験の前に勉強でも始めようものなら周りからからかわれる、などということが起こります。皆と同じ塾に通っても、勉強している姿は見せられません。寧ろ授業をサボったりすることで、自分の既存のイメージを確保せざるを得なくなります。
こういう経験も大人になれば、いい思い出になる可能性は勿論あります。ただ、そのままでは本人が勉強に目覚めても簡単に成績を伸ばすことは難しいでしょう。というのも、怠けている間に周囲との能力格差は広がってしまい、周囲が理解できている話が理解できなくなっているからです。そういう場合、本来ならもっとレベルを下げてやり直す覚悟が必要ですが、周囲の目のあるところではそれも難しいでしょう。
私の教える英語が、そういう人たちが勉強を再度挑戦するきっかけになる可能性はかなり高いと思います。私は、対象がどなたであれ、英語をその初歩の初歩から語っていきます。私の考えでは、ほぼ全員が英語を間違って捉えているので、最初から出なおして頂く必要があるからです。ですから寧ろ、中途半端に「できる」つもりになっている生徒さんの方が苦労は大きいかもしれません。あまりできない生徒さんの方がより簡単に「白紙に」なっていただけるからです。そして、一から話を聞くことで英語がコントロールできるようになれば、本人にとって大きな自信になるはずです。そういう生徒さんの最初の問題点は自信の喪失にあることが多いので、一つの教科で自信が取り戻せれば、それが他の勉強の起爆剤にもなれると思います。また、ある日突然英語ができるようになって実力テストなどで良い成績が取れるようになれば、周囲のイメージも変わっていき、別の意味で一目置かれる存在になれる可能性が上がります。そうやって自分の「肯定的な居場所」が見つけられれば、もともとのポテンシャルが高いのですから、大きな成果も期待できると思います。
私としては、そういう「進学校で伸び悩んでいる生徒」さんたちに、ある種のリセットを経験させて差し上げたいと願っています。勿論、進学校に行っていることが必要条件、というわけではありません。素質がありながらそれが活かせていない人達の力になれればよいと考えております。
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